深作多目的遊水地の概要サマリー(出典:旧埼玉県大宮土木事務所の概要より)
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原本:旧埼玉県土木事務所の深作多目的遊水地の概要
⇒原本が不鮮明、及び河川の専門用語が多いため、以下にサマリーとしてまとめました。
※河川の専門用語については、下線・青字で解説してます。
はじめに
洪水災害に強い流域づくりを目指した中川・綾瀬川流域総合治水対策事業の一担としての深作多目的遊水地が、昭和52年度に用地取得に着手して以来、16年の歳月と200億円を超す事業費を費やして、平成4年度4月に工事の完成を見ることができました。
この深作遊水地は、住宅・都市整公団大宮東団地と埼玉県南御売団地の流域開発と一体となった工事を進めることになり、昭和52年度に新設された多目的遊水地事業制度が全国で最初に採択されました。
※深作多目的遊水地:工事開始1977年(昭和52年)〜工事完成1992年(平成4年4月) 工事期間:16年
1.綾瀬川流域のなりたちと現状
●流域のなりたち
大昔の綾瀬川流域は、利根川・荒川の大河川が乱流・干渉し合っていた氾濫原で池沼の多い低湿地帯でしたが、江戸時代に入り利根川は銚子先へ、又荒川の流路付替え等により、独立した流域となりました。
綾瀬川は従来農業用排水路として整備されてきたため、急激な都市化による流出量の増大に対応できす、洪水のたびに低地盤地域では浸水被害が発生するようになりました。
●人口の急増
その後、これら池沼は次々に干拓されて一大穀倉地帯へと発展してきましたが、昭和30年代後半から首都圏のべッドタウンとして都市化が急激に進み、この都市化現象は現在も進行中です。
●浸水被害
この急激な都市化のため、遊水効果の減少、流出量の増大、地下水の汲上げによる地盤沈下、水質の悪化、等の様々な問題が生じるようになりました。
2.綾瀬川流域を洪水災害から守る総合洪水対策
首都東京に隣接する綾瀬川流域は、今後とも流域開発が進み、都市化による雨水流量の増大を河川改修だけで処理することは困難な状況となっております。このことから、昭和55年度に綾瀬川は、「総合治水対策特定河川」に指定され、昭和58年には流域整備計画が制定された。この総合治水対策は治水施設の整備と流域対策の2本の柱から成っており、治水施設の整備を積極的に進めることはもちろんですが、その流域が持つ保水・遊水機能を確保する等の流域対策を講じ、河川への流出量を抑制して、洪水に強い流域を作るためのものです。
3.深作多目的遊水地の概要
平成4年度に完成した深作多目的遊水地は、綾瀬川流域を洪水災害から守る総合治水対策の中で、確率W=1/10規模(10年に1回起こる大雨)の洪水に対して安全な流域整備計画の一環として位置づけられた調節池の一つであり、洪水時に深作川の流出量を一時遊水池に貯蓄して、深作川合流後の綾瀬川流量を計画流量(80m³/s)以下にするために計画された。この遊水池事業は、治水施設の整備と同時に、住宅都市整備公団大宮東団地(アーバンみらい東大宮)が建設される事となっため、「多目的遊水池事業」と「促進事業」の2事業により工事が進められてきました。
※計画流量80m³/s=80立法メートル/秒とは、東京ドームの容積は124万立法メートルで換算すると4時間強で東京ドームが満杯になる流量
出典:地図は国土地理院
●調節池の概要
調整容積71万m³(立方メートル)(注:東京ドームの容積は124万m³)、治水専用のA池と多目的利用のB池(現8の字公園)で確保しました。なお、小中学校の校庭に利用するC池は、計画規模を上廻る超過洪水、確率W=1/30(30年に1回起こる大雨)の池です。
A(1)池
A(4)池
B池(現8の字公園)
C(1)池(現丸の字公園、春野小学校グランド)
●調節池以外の治水施設概要
※深作川河道〜深作川流域の洪水流出量を調整池まで導く河道と調節後流量を綾瀬川まで流下される河道を整備しました。
A(4)調整池越流提
A(4)深作排水機場
B池・C池間:連通桶官
※越流提〜A(1),A(3),A(4)の各池に面した深作川の天端を、全て暫定計画河底から高さ1.3mの越流堤として整備しました。また、A(4)池とB池間及びB池とC池間にも越流提を整備しました。
<越流提(えつりゅうてい)とは、洪水時に遊水地へ川の水を流入させるため、堤防の高さを一定区間低くした堤防です。>
<天端(てんぱ)とは、堤防の一番高い部分を示す。>
※排水機場〜多目的利用の趣旨を踏まえ、全水量を48時間、多目的部(公園、グランド)は24時間以内で排水できるポンプ施設を、A(1),A(2),A(3),A(4),Bの各池に設置しました。
※伏越・連通桶官〜深作川で左右に分断されるA(4)池には、伏越を、またはA(2)池には上下流の調整池から洪水が流入または、流出できるように連通桶官を、さらに、多目的調整池のB池とC池間にも連通桶官をそれぞれ設置しました。
<伏越(ふせこし)とは、河川の下を横切るように設置される水路>
<連通桶管(れんつうひかん)とは、上下流の調整池から洪水が流入または、流出できる水門>
多目的利用施設について
調整池のうち、A(4)池と大宮東団地隣接のB池及びC池に、平常時における多目的施設として、次の施設を設置しました。
A(4)調整池内の公園
A(2)調整池上の卸売団地
※公園緑地【A(4)池、B池、C池】〜従来の公園と異なった、自然生態系を保持した水と緑の豊かな公園を、地域の人々に憩いとやすらぎの場として利用していただけるように整備しました。
※学校のグランド【C(1)池、C(2)池】〜大宮東団地内の公共施設である小学校のグランドをC(1)池に設置しました。なお、C(2)池には中学校のグランドが平成7年度に完成する予定です。整備にあたっては、冠水及び維持管理面に充分配慮すると共に、緑化に勤め、良好な教育環境に寄与できるように配慮しました。
●調整池上の人工地盤
A(2)池は、埼玉県南卸売団地の建設に伴う開発調整池も兼ねていますが、地上部に人工地盤を敷き、有効活用を図ってます。
各調整池の確率規模別冠水概念図(B、Cを池で利用した場合)
確率の例:確率=1/5規模は、5年に1回起こる大雨
深作多目的遊水地の規模まとめ(計画時)
●広さ【A池とB池(現8字公園)】:35ヘクタール(東京ドームは4.6ヘクタール⇒7.6倍)
●調節容積【A池とB池(現8字公園)】71万m³;立方メートル(東京ドームは124万m³立方メートルの約60%弱)
●上記の調節容積:洪水確率W=1/10規模(10年に1回起こる大雨)の洪水対策
●上記の調節容積+C(1)C(2)小中学校グランド、丸の字公園、のびのび広場を利用すれば洪水確率W=1/30規模の洪水対策
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